343・「夢のアフリカ」
私は、幼いころから自然や動植物が好きで1日中動物図鑑を眺めて種名を暗記していた
ほどです。未だにその記憶は残っており、日常の中でみた散歩中の犬種を正式名称でスラ
スラ出てきたときには自分でも驚きます。同じようにアフリカでも口が勝手に動きまし
た。「あ、マサイキリンとグラントシマウマだ…」
アフリカへ行く夢を持ったのは、図鑑を脳内にダウンロードし始めた小学生3年生の頃
だったと思います。色々な場面で海外に行く!アフリカに行く!と言いながら成長し、大
学生1年生の頃に動物に関わるツアーに誘われましたが、アフリカへの旅費貯金のために
断りました。大学2年生の後期からコロナ禍に入り、幸い?浪費できる行動の制限により
アルバイトの掛け持ちで稼ぎ、コロナ明けすぐに行ったオーストラリアでのサバイバルを
終え、卒論を終え、ついに卒業旅行「夢のアフリカ」です。
導入が長くなってしまいましたが、ついに夢のアフリカ。ちょうど友達の知り合いがア
フリカでツアーをしていると聞き、即座に連絡をしました。1月にツアーを見つけ友達に
声をかけ女子5人集まり3月の卒業旅行に向けて計画開始です。行くと決めたら何も怖く
ありません。航空券を取りツアー費用を払い荷造りをして出発するのみです。
① 往路トランジット ドーハ空港
日本からカタールまで飛行機で10時間
アラブ首長国連邦の隣国なので空港は立派だろうなと思っていました。

当たり前のように本物の木が空港内に生えています。
② ケニアの空港 ジョモ・ケニヤッタ空港
カタールからケニアまで飛行機で5時間
隣でウイスキーをストレートで何杯も飲んでいるケニア人(酔っ払い)から、ケニアに
ついて教えてもらいました(酒臭い)。着陸し初めて吸い込んだ乾いたサバンナの空気
は忘れられません。
空港内はトラクターが生き生き仕事をしていました。

③ 国立公園に向かうセスナ
遅れもアクシデントもなく無事にケニアに着き、国立公園に向かうセスナに乗り込み
ました。しかし全く離陸する気配はありません。
一度降ろされ、少し大きめなセスナで離陸。飛行機に乗っている際に時々あるあのふ
わっと感、何度も体感しました。普通に落ちるんじゃないかと生きた心地はしません
でした。

④ 国立公園に迎えに来た乗用車
迎えに来るはずだった大きい車が不調のため5乗の乗用車に6人で乗ることになりま
した。運転席に1人、助手席に2人(私は助手席の運転席側)、後ろに3人座り整備さ
れていない道を車で約1時間揺られました。ケニアに着いてから日本で常識とされて
いる法律は常識ではありませんでした。ノーリミット!ノーシートベルト!

⑤ サファリツアー
国立公園に向かう道中、宿から出て数分
「あ、マサイキリンとグラントシマウマだ…」遠い記憶がよみがえりました。
あの頃は平たい紙の上に印刷されていた動物が目の前に動いています。その時はまだ
テレビを見ている感覚で、現実とは信じられませんでした。

国立公園内に入ると、私が最も推しているハイエナが出迎えてくれました。あの時の
感情は私の知っている言葉では言い表せません。最高でした。

⑥ お散歩サファリツアー
昨夜は夜行性の野生動物が歩いていたであろうサバンナを歩いて散策です。少し長い
棒を1本持ったレンジャーの男性2人について歩きます。ライオンより怖いのはゾウ
だそうです。レンジャー軽装備過ぎないか?と思ったのはほんの数分、目線の数十メ
ートル先にいるシマウマの群れを見た瞬間に不安は吹き飛びました。

⑦ 宿での食事
ツアーに申し込んだ際に、ヤギかヒツジという選択肢が与えられました。屠殺してみ
んなで食べるようでした。この地域では肉を食べる際には生きている家畜を買ってき
て食べるようです。
大学時代に実習でブタの屠殺を見学したのですが、衛生的で動物倫理に乗っ取った方
法でした。ケニアではさらっとヒツジを外の土の上で屠殺し、生き血をバケツにため
てごくごく飲んでいました(私は少し舐めるだけでしたが生臭くなく少し鉄分を感じる
程度でした)。新鮮なお肉を焚火で焼いたものは弾力もありジューシーで塩をかけて食
べた味が忘れられません。

食後に木の枝で歯磨きです。歯磨き用(とされている)の木から枝を切って外皮をナイフ
でそぎ落とし歯磨きスタートです。奥歯で噛んで徐々に柔らかくします。初めは強いメ
ントール味でヒリヒリしましたが、噛んでいくと次第に程よい爽快感となりさっぱり
しました(木の繊維が口に残り気になる)。ガム感覚で現地の人が隙あらば枝を咥えてい
た理由がわかりました。心なしか現地の皆さんの歯は白く綺麗でした。余談ですが、
三日間やや茶色く濁ったシャワーを浴びていたのにも関わらず、肌の調子が人生1良
かった気がしました。手軽な全身泥パックです。
日本で過ごしていたら見られない、現地のリアルな生活を実際に体験できたのは本当
に良い経験でした。
⑧ 帰りのセスナ
サファリツアーの時から車からヤバめな異音がしていました。セスナが出発する滑走
路に向かう道中、エンジンがかからなくなりました。もちろん電波はありません。ツ
アーの主催者は呑気に
「セスナに待ってもらえるから大丈夫」(え、飛行機って待てるの?)
理解できない会話をされて結構絶望しました。頭フル回転させるも打つ手は思い浮か
ばずここでも人間の無力さを感じました。「ハハ、ワンチャンもう一泊する?(笑)」(その冗談全然笑えない。)
偶然通りかかった、高級サファリカーが助けてくれることとなり出発の15分遅れでセ
スナに乗り、無事にナイロビへ戻ることができました。

⑨ ナイロビでお土産の調達
ケニアの街中に入るのはその時が初めてで交通ルールの無さと交通量に圧倒されなが
らタクシーの窓から外を眺めていました。ケニアにはキベラスラムという大きなスラ
ム街があります。スラム街に近づくにつれて路上販売が増えていきました。タクシーの
運転手からスワヒリ語を教えてもらいながら、「窓は絶対に開けるな、iphoneなんか一
瞬で盗られるから」と言われました。スラム街の横を通ってみると、スラム街と大き
な道路の境には塀がたっており、その隙間から見たスラム街は混沌としており何とも
言えない感情を持ちました。

そのタクシー運転手と仲良くなり、お土産を買い、ディナー後に空港まで送ってあげ
るから時間になったらそのレストランに来てくれると言いました。食べていると少し
早めにタクシーの運転手が迎えに来てくれました。ディナーを少しご馳走し楽しく会
話をしたのち空港に向かいました。
空港に着くと「またケニアに来たときは僕を呼んでね」と友情の証としてキーホルダ
ーをもらい、ツーショットを取り、Facebookを交換しお別れしました。
⑩ 復路トランジット クアラルンプール空港
クアラルンプール空港に着くとケニアとは対照的な湿度となり、ムシムシしてちょう
どスコールのような雨も降っていました。トランジットですが入国する必要があり、
より空港内を楽しむことができました。日本行きの飛行機の離陸まで6時間ほどあっ
たので、フルーツを食べたり、マックの現地限定メニューを食べたり、ローカルフー
ドっぽい麺類を食べました。(ゆっくりしすぎて乗り遅れそうになりました(笑))

⑪ 北海道に帰還
3月末でしたので、まだやや雪も残っていました。色々な気候を短いスパンで体感し
ていたので北海道に戻ってきても、どこにいるかわからないという感覚になりまし
た。3泊7日という短い期間でしたがずっと憧れだったアフリカ大陸を訪れることが
でき最高の思い出と経験ができました。
正直幼いころは身近に海外へ行ったことのある人は居なかったので、行けるとは思って
いませんでした。しかし、行けるか叶うかわからないことも口に出してより多くの人に伝
えることで、実現することの責任感を持ち始め、実行のために自然と動き始めました。2
0年以上持ち続けた目標を達成した自分を誇らしく思うとともに、私の周りで支えてくだ
さった家族や友人に感謝しています。
タイミングが来たら心地よい環境と恐怖心を捨ててでも挑戦する!Now or never!
新入社員Rの旅行記でした。

