364・傾いた事務所から始まった、私たちの再出発

2009年、私は札幌から月形町へ出向してきた。
創業1913年のマルダイ興産。
長い歴史を持つ会社だが、私を迎えたのは、風雪に耐え続けてきた“限界寸前の建物たち”だった。
傾いた事務所。
断熱材のない鉄板の壁。
冬は凍えるほど寒く、夏は息が詰まるほど暑い。
豪雪の1月は毎日のように屋根に上がり、雪を落とした。
6年前には完成したばかりの仮設倉庫が倒壊し、
4年前には肥料倉庫の屋根が折れ、翌年も同じ場所が折れた。
私も心が折れた。
「このままでは、誰かが傷つく」
そう思った瞬間から、私の中で“新社屋”という言葉が静かに動き始めた。
■プレハブから始まった、迷いと葛藤の計画
最初に役員から示されたのは「プレハブで建てる」という案だった。
現実的で、コストも抑えられる。
でも豪雪地帯では確認申請が下りず、断念。
次に検討したムービングハウスは、全国的な災害多発で見積もりが1.6倍に跳ね上がった。
「これでは理想の間取りにならない」
そう判断せざるを得なかった。
そして最後に残ったのは、
“普通に建てる”という、最もシンプルで、最も勇気のいる選択だった。
■新社屋に込めた願い
小さくていい。強くて、暖かくて、みんなが笑える場所にしたい。
- 応接室

黒革の応接セットの重たい雰囲気をやめ、
お客様が自然に話せる、柔らかい空間に。
- 検査室兼ミーティングルーム兼休憩室
社員通用口のすぐ横に配置し、動線を効率化。
- 談話室・昼食スペース・Web会議室
一つの部屋に三つの役割。
コンパクトだからこそ、空間を最大限に活かす。

- 書庫
「片付く会社は、仕事も片付く」
その思いで収納力を強化。
- 更衣室
以前は女性が廊下で着替えていた。
男性もロッカーがない人がいた。
その“当り前じゃない日常”を終わらせたかった。
- トイレ
プライバシーを守れる空間へ。
「以前がひどすぎた」という反省から生まれた改善。
- フリーアドレス風の机
社員が少なすぎて笑ってしまうけれど、
“自由に座れる”という感覚が、働き方の柔らかさを象徴している。
■新社屋が変えたのは、建物ではなく”心“だった
新社屋に移ってから、私自身が驚くほど変わった。
以前は体調を崩すこともあった。
気持ちが沈む日もあった。
「この先どうなるんだろう」と不安になることもあった。
でも今は違う。
毎朝のミーティングが楽しみになった。
場所を変えながら話すと、自然と笑顔が増える。
対話が増え、コミュニケーションがスムーズになった。
つらいことがあっても、前向きに頑張れるようになった。
そして何より、
会社の未来を明るく描けるようになった。
これは建物が変わったからではない。
“心が軽くなった”からだ。
■まとめ
新社屋は、未来への希望そのもの。
豪雪地帯で100年以上続く会社が、
これからも続いていくために選んだ新社屋。
それは、
働く人の笑顔を増やし、
対話を生み、
未来を明るく照らす場所。
おごらず、背伸びせず、
ただ“良い会社でありたい”という願いを形にした社屋。
ここからまた、新しい歴史が始まっていく。
月形町
マルダイ興産株式会社
代表取締役社長 畑 孝

